アーンアウトで会社を売却したので実体験を元にM&Aの事例を解説

アーンアウトで会社を売却

Twitterでも軽くご報告したんですが、2社の代表取締役をやってた会社のうち1社の株式を全て売却しまして、「会長」っていうふわっとした役職につきました。

法人自体はこれまで3社ほど起業した経験があります。

規模的には小さいExitですが、とりあえずしばらくは休んでても大丈夫な状態になりました。

ちなみに現在は会長も退任しました。

目次

アーンアウトで会社を売却しました

アーンアウト

「アーンアウト」というとあまり聞きなれない言葉かもしれません。

M&A契約において売却後の一定期間に条件を達成した場合に、追加で報酬が支払われる条項付きの契約方法です。

創業者が株式の売却とともに抜けるのではなく、一定期間は会社に残って事業を成長させることが求められます。

アーンアウト条項を簡単に説明

わかりやすく言うと、例えば最初にM&A契約を締結した際にお金が50%支払われるとします。

2年後の売上目標を5億円とかにして、達成できたら残りの50%分+インセンティブが支払われるみたいなイメージです。

達成ができなかった場合は、条件に応じて残りの報酬が支払われる形です。

アプ神

メリットは買い手はリスクを減らせるのと、売り手は結果を出せばさらに報酬を手に入れることができるってことです

メモ男

売却して終わりじゃなく一緒に伴走していくイメージで

3年間に渡って報酬を得る

自分の場合は3年のロックアップ期間があって、最初の契約時にまずドンっと報酬をもらいました。

そのあとは月々の報酬に上乗せしてもらい続けて、2年が終わったタイミングで全株を手放して残りの報酬を受け取りました。

で、残りの1年は株式は持たずに会長っていう役職で間接的に経営に関与し続けて、ソフトランディングを図るイメージですね。

アプ神

ちなみに条件を達成したかどうかで言うと、未達です。当初にデューデリした時価総額+αくらいで着地しました

会社分割し新設会社に事業譲渡

会社分割

今回のM&Aはちょっとややこしい構造になっていたんですが、形としては会社分割をして新しく法人を1つ作って、そこに事業譲渡をしたんですね。

なので元々その事業をやっていた会社と、事業を譲渡した会社の2社の社長をこの2年間やっていて、株式を売却したのは新しい会社の方なんです。

売却した会社の事業について

あまり詳細まで書いてしまうと関係者に影響が出る可能性がありますが、ざっくりいうとBtoBの受託事業を行っていました。

いわゆるスモールビジネスというやつで、社員数でいうと30名規模くらいです。

基本的に売上は人月計算なのでビジネスとしては難しい要素もなく、会社の価値としては取引先と既存の社員、またそれに付随するナレッジといったところでしょうか。

会社分割で事業を切り分け

会社分割でやったのは法人で契約していた社宅や車の契約、また借入金なども一部残っていたので法人と事業を切り離すためにそのような形をとりました。

会計士と一緒にこの辺の手続きを全部やったので、これはこれでめっちゃ勉強になりましたね。

社歴としては10年以上あるものの従業員はみんな新しい会社の方に移籍していて、いまは身軽な状態になっています。

アプ神

残った会社は自己資本100%の僕の1人社長会社です

メモ男

2社経営してたって言ってるけど、元は1つの会社ってことね

アーンアウトでのM&Aのメリット

アーンアウトでの売却におけるメリット

自分の経験としては正直デメリットの方が多かったんですが、先にアーンアウトで会社を売却した際のメリットについて触れていきたいと思います。

会社間でのやり取り上では特に大きな問題もなく、こちらも責任持って引き継ぎまでやり切れたので、M&A取引としては成功だったのではないかと思います。

組織体制の移行がスムーズにできた

売却後にいわゆるPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)が始まるわけなんですが、買収側の企業文化に既存社員を寄せていかないといけないわけです。

資本構成だけでなく、オフィスの統合や業務フローなど多岐に渡る変化があるため、ここの流れをなめらかに行なっていく必要がありました。

2年間は代表取締役としてとどまっていたので、大枠の方針を伝えつつ時にはガス抜きも行い、離脱する社員がほとんどいないまま組織を統合することができたのは良かった点です。

経営管理について学ぶことができた

自分が売却した時点では30人規模くらいだったんですが、基本的にトップダウンで全ての物事を決めていました。

売却後は毎週の経営会議で議論しながら、経営判断を進めていきます。

買収側の経営ボードにも入りながら、管理会計や経営計画などを一緒にやることができたので、1人でやっていたときよりも刺激があり、純粋に勉強になりました。

特に顧問で入られていた方との壁打ちではさまざまな気づきがあり、フラットな意見をもらえていたので非常に助けられましたね。

アプ神

顧問の方はプライム企業の創業メンバーの方で、特に経営計画についてめちゃめちゃ勉強になりました

メモ男

大企業の創業メンバーの方と壁打ちできる機会はそんなに無いっすからね

アーンアウトにおけるデメリット

アーンアウトでの売却におけるデメリット

デメリットとしては、主に創業者としてのマインドに集約されるのではないかと思います。

資本に関する契約は時に不可逆的になってしまうため、意思決定をしたタイミングでは納得していても、時間経過とともに様々な問題が浮き彫りになっていきます。

ここは自分でも徹することができなく、未熟だったなと反省しています。

経営者のモチベーションが続かない

実はちょうど契約締結のタイミングで少し大き目の案件が取れたため、月次売上が2倍くらいの規模になっていました。

インセンティブが発生する目安まで頑張ろうとは思っていたのですが、それなりの金額が個人口座にあって、会社のキャッシュフローの心配もする必要がない状態です。

経営会議ではここからさらに15倍の目標値が引かれるんですが、自分自身は抜けることが決まっているわけなんですよね。

自分ごととしてやってきたものが、時間経過とともに他人事になっていくような感覚があり、自分の頭の中を整理するのに苦労しました。

アプ神

会社を去ることが決まっていながら事業も成長させる

メモ男

オーナーシップも無い状態でやるのは難しいすね

企業文化の違いがストレスに

規模や文化が違う会社と同じ業務フローに合わせる必要があるわけなんですが、意思決定の遅さや会議の多さなどはもどかしさを感じることが多かったです。

また、細かい点で言うとファイルをZIPにしてパスワードを分けて送ってくるとか、チャットツールがいけてないとか些細なことでもイライラしてしまうんですよね。

最初は合わせないといけないなと思って仕事してるんですが、こういう日常的な仕事の進め方でストレスが蓄積されていくと後々ボディブローのように効いてきます。

新しいことにリソースが割けない

前述したPMIはもちろんやっていくんですが、新たな数字を取りにいったりと事業を成長させるためにはパワーが必要です。

ただでさえモチベーションの維持が難しい中で、アーンアウトが終わった後のことまで考えて、新しいことにリソースを割くとなると至難の技です。

幸いなことに時間的な拘束は特に無かったので、空いた時間を見つけて新たな事業の仕込みはやっていましたが、それでも片手間になってしまいます。

アプ神

3年という期間もぶっちゃけ長すぎましたね

メモ男

売却してスパッと切り替えた方が得策だと思うっす

Exitした後の事業について

これから先の未来

とりあえずは少しまとまった資金が入ったので、残した会社の方に投資して会社を大きくするつもりではいます。

ただし元々やっていた事業に関しては競業避止という条項があって、ライバルになるような同じ事業はしばらく行うことができません。

なので、これからやる事業については新規事業になります。

新しい事業への準備期間

焦って何か物事を初めてもあまり良いことはないので、しばらくは色々な業界や市場をリサーチして、自分なりに勝ち筋のあるビジネスを見つけたいなと思っています。

本来は売却先と一緒にやりたかったことがあったんですが、お互いの方向性の違いなどもあって頓挫してしまいました。

今後は「何をするか」についてはまだ決まってないんですが、とりあえず地方ビジネスは立ち上げたいですね。

アプ神

2019年末に売却が完了したので、わりとすごいタイミングだったんじゃないか説があります

メモ男

世の中的には大変な時期の前で、売却できる最後のタイミングだったのかもしれないっすね

会社をExitできたことのまとめ

バイアウト

これまではBtoBの比較的堅いビジネスを経験してきたので、今後はBtoCとかこれまで経験したことがない業界にも興味が湧いています。

ちなみにもう1回会社売却をするとしたら、アーンアウトではやらないと思います。

アーンアウトについての所感

今回は買い手側からの提案でしたが、やはり売り手側としては不利に感じますよね。

例えばサイトM&Aなら売却から3年も期間があれば、アルゴリズムも変わってサイトが飛んだりトラブルも発生したりするでしょう。

その時に事業の責任者として対応するのか、それとも外にいてアドバイスを求められるような立ち位置にいるのかで全然違うと思うんですよね。

もちろんプラスに持っていけばインセンティブが貰えるわけなんですが、お互いに「話が違うじゃん」なんてことは当然のように起きるので、やるとしても期間は短い方が良いと思います。

売却交渉は複数社とやった方が良い

今回は古くからの知り合いの会社への売却だったんですよね。

交渉はそこの1社としか行なっておらず、アーンアウト条項の話が出てきたのもだいぶ交渉が進んでからだったんです。

それなりに時間をかけて交渉していたので、気持ち的にはもう売却する方向で考えていました。

なのでアーンアウトの話が出てきたタイミングで、他の選択肢を用意していなかったのは純粋に失敗だったなと思います。

次に会社売却するならのようなプラットフォームを使って、売却先候補を複数社準備しておくべきですよね。

一通りのファイナンスを経験

当初の目論見からは若干外れてしまったんですが、自分としてはエクイティもデットファイナンスもやれて、最終的にExitまで持って行けたので良い経験になりました。

資本提携や株式譲渡契約など諸々の流れについては、顧問の会計士にかなりお世話になりましたね。

引き継ぎや債権回収なんかもまだ残っているので気が抜けない状況ではあるんですが、一旦は一区切りできたのかなと思っております。

良かった点も失敗した点もありましたが、自分で意思決定して進めたことなので後悔はないです。

今回の会社売却では様々なことが学べたので、やっぱり何事もやってみないとわからんよなって改めて思いました。

アプ神

実は身近な人にしか伝えてなくて、ひっそりExitなんです

メモ男

とりあえずひと段落できてお疲れでした

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