電子マンガの市場はここ数年で急激に伸びています。
2011年では500億円程度だったものが、2021年には電子書籍市場全体の84.6%を占める4660億円が電子マンガの市場規模となっています。
その中でもマンガアプリにおいては「LINEマンガ」の独壇場だったものが、「ピッコマ」が2020年の7月売上で1位になったという発表がありました。
(※非ゲーム部門の日本国内のセルラン1位)
そこで今回は、このピッコマがなぜすごいのか、またそのUXや課金への導線など優れている点について分析していきたいと思います。
コンテンツを提供している人はヒントになることがあるかも
ピッコマ
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なぜピッコマの売上は大躍進したのか
ピッコマのセルラン推移を見ていくと、2018年より前からずーっと右肩上がりでじわじわと売上を伸ばしていることが見て取れるかと思います。
なぜここまで順調に売上を増やし続けていくことができたのでしょうか。
ピッコマの売上が伸びた理由
外部環境やビジネスの特性を考えると、以下のような要素があるのではないかと考えられます。
- 電子マンガの市場規模が拡大したため相乗的に売上も伸びた
- CM等のプロモーションによりアクティブユーザーが増えた
- コンテンツ量が増えつづけストック的に売上が積みあがった
これらは他のマンガアプリを展開している企業にも同じように当てはまるため、売上増の起因にはなるものの、ピッコマの1人勝ち状態を説明するにはやや足りません。
そこでもう少し掘り下げて考察していきたいと思います。
もちろんプロモーションが他社よりうまくいったとか、コラボ企画やキャンペーンの打ち手なども要因としては大きいかと
「俺だけレベルアップな件」のヒット
まずは「ピッコマBEST OF 2019」の1位に選ばれた作品「俺だけレベルアップな件」の大ヒットが売上を大きく引き上げたのではないかと推測します。
一般的なマンガ自体はどのアプリや紙でも読むことはできますが、独自の作品となるとここのピッコマでしか読むことはできません。
WEBTOONの独自作品
この「俺だけレベルアップな件」はWEBTOON(ウェブトゥーン)と呼ばれています。
海外で人気の「オールカラー」「縦スクロール」で描かれた、スマートフォンに最適化された形式になっているのが最大の特徴です。
しかもこの作品、過去話については時間経過することで無料で読むことができるため、アプリ自体への集客として重要な役割を担っているのではないでしょうか。
ちなみにコミック版はAmazonなどでも販売されていて、サンプルから見てもらうとわかると思いますが、縦スクロールのWEBTOONとはまた違った印象になるので結構ビックリします。
最新話を読むために毎週課金
アップされたばかりの最新話を読むためには有料のコインで購入する必要があるため、継続して読んでいる人は毎週課金していることになります。
僕も毎週課金してるし、2話同時アップされてもなんのためらいもなく購入してます
まんまとピッコマの戦略にハマってるじゃないすか。
強いコンテンツは課金額を積み上げる
「俺だけレベルアップな件」は急成長しピッコマのキラーコンテンツとなりましたが、月の売上で1億円を超える規模となり、これが毎月どんどん積みあがっています。
また、独自のWEBTOONは増え続けており、ヒットするコンテンツがリリースされ続けている状態となっています。
課金ユーザーが増える仕組み
無料で入ってきたユーザーは最新話まで追いつくと、毎週の最新話がアップされる度に課金するようになるため有料ユーザーが増え続けている状態になっています。
ユーザー目線だと1話ごとの金額が少額なため、課金のハードルは低いですよね。
また普段から週刊誌などを買っていた層からすると「マンガを毎週購入する」ことに慣れているため、無料から有料ユーザーへの転換率は非常に高いのではないかと推測されます。
また、1度最新話を購入して読むようになると、そのまま継続して購入するようになるため、離脱率も非常に少ないのではないでしょうか。
ジャンプを発売日より前に買ってた人なんかは、最新話を早く読みたくて仕方がなくなります
「待てば¥0」だけど少しお金を出せば早く読めるみたいな
ピッコマはマンガのレコメンドが優秀
ピッコマでマンガを読んでいると、読み終わった後などで別のマンガへのおすすめが表示されます。
レコメンドで回遊率が上がる
類似ストーリーや好きな絵柄、同じ作者のマンガなどつい読んでしまうようなマンガのタイトルが、適宜レコメンドされていきます。
ここのロジックは非常に研究されていて、膨大なユーザーデータがピッコマにとって大きな資産になっているのではないでしょうか。
同じ作者の続編はそのままスムーズに読んでしまいますが、気になる絵柄のマンガが出てくると、つい読んでみたくなります
レコメンドでいくつかのマンガが「数珠つなぎ」のように繋がって回遊性も高まりますよね
閲覧履歴がストックされる
気になって一度読んだマンガは自分の「閲覧作品」に残ります。
その場では課金されなくても最新話がアップされた際や、新刊が出たタイミングでピックされてくるので、その後のリテンションにも繋がります。
また時間経過によって無料話が読める状態になると「今読める」タグに表示されるようになるため、本棚メニューは随時更新されるデータベースとして機能しています。
ここのUXはピッコマにとって重要な要素となっていますよね
完結してるマンガがほぼ無料で読める
ピッコマでは他のアプリと同様に、一般の人気漫画も提供されています。
その中で無料話増量キャンペーンや、毎日定時に5話づつ読める無料チケットを配布したりと様々な打ち手を行っています。
「待てば¥0」でマンガをつまみ読み
ユーザーは気になったマンガを「つまみ読み」することができます。
気に入った作品は「待てば¥0」で、時間経過により無料で読んでいくことができる仕組みになっています。
ただし、さすがに全て無料というわけにはいかないので、マンガの中盤や後半からは課金して読んでいく必要があります。
ある程度読み進めていったマンガで完結しているものって、やっぱり最後まで読みたくなるじゃないですか
最初この仕組みに気づかずにマンガを読み進めていって、最後の方で課金が必要になってぐぬぬってなった記憶があります
フリーミアムからの課金誘導
ここはピッコマの大きな課金ポイントだと思いますが、いわゆる「フリーミアム」の形ですね。
無料話から有料話に変わるポイントが絶妙で、ほどよくチューニングされているなと感じます。
特に完結しているマンガで「最終話」が少し先に見えていると、必然的に課金してしまう人も多いのではないでしょうか。
この「待てば¥0」という仕組みが、ピッコマの売上を大きく成長させた理由として中の人も語られています。
VIPシステムによる課金促進
2021年9月のアップデートでリリースされた「コインチャージランク」という仕組みなんですが、ゲーム業界では「VIPシステム」と呼ぶ方が馴染みがあります。
VIPシステムの仕組みについて
VIPシステムは特定期間における累計課金額に応じて、ユーザーが様々な特典や報酬をもらうことができる仕組みです。
VIPシステムの効果としては継続的な課金者への優遇と、ランクの区切りまで課金したくなる心情が生まれるためARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均課金額)を引き上げます。
ソーシャルゲームでVIPシステムを導入すると、無課金ユーザーから不満が出たり諸刃の要素があるのですが、マンガアプリにおいてはデメリットは少ないのではないでしょうか。
ユーザーの囲い込みが狙い
また、他社のアプリでも読めるようなマンガの場合、このようなVIPシステムがあるとピッコマに集約した方が恩恵が得られるため、ユーザーの囲い込みにも繋がります。
実際に他社のマンガ広告などで気になった作品は、ピッコマにもあるか一度確認しちゃいますよね。
ユーザーとしても複数のマンガアプリを立ち上げるよりも、1つのアプリ内で完結させたい心情があるのです。
ちなみにこのコインチャージランク機能は2024/5/1に終了となりました。
仕組みとしては面白いものの報酬バランスが難しかったり、逆に課金抑制になる場面もあるのでその辺りを分析した結果なのかもしれないですね。
ピッコマについてざっくりまとめ
ピッコマについて気になりだしたのはちょうど2018年くらいで、別のマンガアプリの仕事を請け負うタイミングで競合調査をしたのが最初でした。
アプリのセルランを追っていくと、キレイなまでの成長曲線を描いていてストック的なビジネスモデルとしても優秀だなぁと感じました。
他にも色々な機能が適宜追加されていて、運営開発の基盤がしっかりしているように思えます。
ピックリスト機能は失敗かなと思って見てたけど、あっさり削除する判断とかも大事っすよね
最適化されたUXが強み
全体的なUIも使いやすいのですが、WEBTOON(ウェブトゥーン)と呼ばれるUXがやはり衝撃で、スマートフォンに最適化されたマンガの未来が詰まっているように思います。
またアプリのアップデートも適宜行われていて、様々な施策やイベントが追加されています。
ベースとなるUI周りを大きく変えたりすることもありますが、レコメンドの部分やイベント施策などは細かく調整しているのが分かりますね。
レコメンドの仕組みや課金導線などは、現時点で他のアプリとは一線を画しているレベルです
コンテンツだけじゃなくアプリとしての完成度も高いってこと
広告はユーザーメリットにほぼ限定
広告要素も無料話を追加したいタイミングや、デイリーボーナスを受け取る際などに限定されていて、基本的には「自分から選択して広告を表示させる」仕組みになっています。
勝手に表示される広告と、ユーザーが自ら選択して表示させる広告の違いは大きいですよね。
無料話に広告をベタ貼りされてる他のマンガアプリと比較すると、ユーザー体験を損なわないことの重要性が理解できるのではないでしょうか。
今後もマンガアプリ市場は拡大していくとは思いますが、競合も強いですし、バーティカルな形でのサービスなんかも出てきそうで、ますますこの業界には注目していきたいですね。
最近はピッコマもディスプレイ広告を一部入れてるみたいす
国内はアッパーが見えてるのでここからはグローバルですね
ピッコマ
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