スモールビジネスというとアフィリエイトやライターなど、個人事業のようなものを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
そもそも「スモールビジネス」という言葉の定義が曖昧なんですが、ここでは受託開発や広告代理店、営業代行などBtoBの汎用的なビジネスでの起業の仕方について解説していきたいと思います。
スモールとは言いつつも例えば受託開発なんかは、年商で10億を超える規模になることも珍しくないですし、そのままスケールして上場するような企業もあります。
自社でプロダクトを作ってリリースするスタートアップの対局として、自己資金をベースに手堅くビジネスを展開していく起業の方法として、ここではスモールビジネスと定義していきたいと思います。
自分もこれまで3社ほど創業してきましたが、全てがBtoBのスモールビジネスです。
そのうち1社はExitまで持っていくことができて、ある程度まとまった資金を手にすることができました。
自己資金や公庫などからの借入でビジネスを始めましょう
資金調達をして赤字を掘りながら創業するのではなく、最初から黒字経営を目指すやり方すね
スモールビジネスが注目される理由
昨今はスタートアップブームなどもあり、ピッチイベントに登壇したり、若くしてVCやエンジェル投資家から大きな資金を集めて起業する人が増えています。
しかし、サービスを作ったこともない人がいきなりプロダクトを作っても、成功する確率が低いのも現実です。
スタートアップにキラキラしたイメージを持っている人もいるかもしれませんが、成功をおさめる企業の裏側で、実際にはサービスが上手くいかずに消え去っていく起業家が沢山います。
そんな中、最近では手堅くキャッシュエンジンを作って黒字の状態にするために、労働集約型などのスモールビジネスから起業する人が増え始めています。
国内企業の大半は中小企業
日本の全企業数のうち99.7%は中小企業なんですよね。
約358万社の中小企業がそれぞれ革新的な技術を持っていたり、競合優位性のあるビジネスをやっているかといえば、実際はそうではありません。
多くの企業が世の中に既にあるビジネスをやっていて、端的に言ってしまうと営業努力によって収益を上げていいます。
日本では中小企業の社長がお金を持っているなんて言われていますが、事業が上手くいっているオーナー社長は会社の経費もある程度は自由に使えますからね。
社宅として法人契約でマンションを借りていたり、会社でリース契約した車に乗っていたりするのです。
起業のしやすさと成功確率
起業することはリスクだと思われる方も多いかもしれませんが、実際にはやり方次第です。
前述したように日本ではそこそこ儲かっている中小企業がたくさんあって、スモールビジネスで起業する人が増えたのは、そのことに気づいた若い起業家が増えているというのが実際のところかもしれません。
ユーザーが集まるかどうかわからないサービスを0→1で立ち上げるよりも、毎月決まった金額の売上が立ち、営業することでスケールできるのがスモールビジネスのメリットです。
広告代理店や営業代行などのビジネスモデルは単純で、営業開拓することによって顧客を増やし収益基盤を作っていくことができます。
大きく資金調達して、Jカーブで赤字を掘って急成長を目論むスタートアップとは異なり、スモールビジネスで早期に黒字化してから着実に経営することで成功確率が高まります。
大きく利益が出れば役員報酬を増やしても良いですし、事業投資に回して新しいビジネスを作り上げても良いわけで、身の丈にあった経営計画を推し進めていけるのが良い点ですね。
低コストで起業することができる
今は資本金もそこまで用意する必要は無く、創業融資なども充実しているので初期費用があまりなくても起業することができます。
また起業時はシェアオフィスなどを活用することで、固定費も安く抑えることができます。
一昔前までは人を採用するのにシェアオフィスだと不安に思われたり、取引先からの信用も得られなかったりしたんですが、昨今のテレワーク実情もありシェアオフィスも普通になってきましたよね。
コーポレートサイトと名刺と会社の説明資料を用意すれば、すぐにでも営業活動が始められるのです。
また、マネーフォワード クラウド会社設立などを使えば、面倒だった法人登記もクラウド上で自分でできるようになったのも大きいですよね。
スモールビジネスの具体的な始め方
ビジネスを始める上で、ノウハウや情報が何も無い状態で始めるのは無謀でしかありません。
事前にネットや書籍で調べたりすることもできますが、重要なのはそのビジネスを「どこで学ぶか」ということです。
表面的な情報だけでビジネスが上手くいく可能性は低いのです。
仕事をしながら学ぶ方法
最も確実なのはそのビジネスを行なっている企業で実際に働くことです。
もしいま会社員なのであれば、自分の会社のビジネスモデルや取引先、顧客開拓の方法や商習慣などを徹底的に調べてみましょう。
テレアポで営業開拓しているのか、WEBやSNSからの問い合わせなのか、はたまた展示会でリードを作っているのかなど様々なことがわかるかと思います。
契約書やサービスの納品物、入金サイトはどうなっているのか、参入障壁や起業するとしたらどれくらい初期費用が必要なのか、様々な観点から研究することができるはずです。
広告代理店や営業代行、SESなど自分がやってみようと考えているスモールビジネスが見つかったら、まずはそのビジネスをやっている会社に転職するのが近道です。
また、そういった企業は、一緒に起業する仲間を見つけやすい環境でもあります。
独立する際は不義理をしない
ここで注意したいのが、実際に起業する際に顧客を奪ったり、社員を引き抜いたり、契約フォーマットをそのままパクったりと不義理をしてしまうと、のちのち大きなトラブルに繋がります。
場合によっては訴えられてしまうこともあるでしょう。
お世話になった会社と良好な関係性を築くことができていれば、支援してくれることもありますし、最初の取引先になることもあり得るのです。
最初から独立することを目標にしているのであれば、社員ではなくアルバイトで入社すれば辞める際に大事にもなりにくいのではないでしょうか。
また、正直に独立したい旨を伝えてから入社する方法もあります。
とはいえ、中小企業の社長も聖人君子な人ばかりではないので、自分の目的が達成できたら仕事の引き継ぎをして、スッといなくなるのがベターでしょうね。
牛角の西山社長の事例
牛角創業者の西山社長は不動産事業を営んでいましたが、バブル崩壊後に外食産業へと転身されます。
その際にマクドナルドのアルバイトをして、飲食チェーン店のオペレーションや人材の育成マニュアルなどを学び、後の牛角にそのノウハウを落としこみました。
全く異なる業種への転向ではありますが、世界一のフランチャイズチェーンで学ぶことは、後のフランチャイズ展開まで見通してのことだったのかもしれないですね。
自分も学生時代のアルバイトで系列店の立ち上げに関わりましたが、西山社長も良く店舗にこられて話をしてました。
かなり分厚いマニュアルを渡されて、オペレーションの隅々まで徹底してトレーニングをした記憶があります。
当時は新業態の直営で5店舗程度でしたが、2年足らずで200店舗ほどまで一気にFC展開したのを目の当たりにしたので、アルバイトながら非常に刺激になりました。
事業経験者の手を借りる方法
スモールビジネスで起業する際に、その事業の経験者が仲間にいれば話は早いですよね。
その他にもビザスクなどでスポットコンサルを受けたり、顧問のマッチングサービスで事業経験者を引き入れたりすることでノウハウを得ることもできます。
もしもまだ事業領域が定まっていない場合は、先にスポットコンサルをいくつか受けてヒヤリングしてみて、勝ち筋がありそうな事業にBETするのもおすすめです。
ここで重要なのは顧客開拓をどのような方法で行なっていくのかというセールスの部分と、サービスをどのように提供するのかというデリバリーの部分を重点的に習得しましょう。
自分が経験したことのない事業ですぐに軌道にのせることは難しいかもしれません。
トライアンドエラーを繰り返しつつ、的確なアドバイスをもらえる環境を用意することで、失敗するリスクを低減することができます。
創業資金の作り方と成長事例
スモールビジネスとはいえ、目先の資金がないと社長自身も生活ができませんし、社員を雇うとなると当面の資金繰りは不可欠です。
創業前から個人事業として売上があったり、起業に向けて貯金をしていた人であれば、少なくとも半年間はやっていけるでしょう。
けれども、若くして起業しようとする人はそこまでお金を持っていない人が多いんですよね。
そこで創業資金の作り方や事業が成長していく過程について、事例を踏まえて解説していきたいと思います。
販売代理店で一気に資金を作る
これは知り合いのとある上場企業の立ち上げの頃の話なのですが、その当時はまだこれからやる事業自体が定まっていませんでした。
営業畑の社長は仲間と2人で会社を立ち上げましたが、多少の貯金はあるものの目先の売上見込みがほとんど無い状態でした。
そこで通信回線の代理店をやっている知り合いの社長にお願いをして、好条件の販売手数料で二次代理店になることができたんですよね。
1契約につき数万円のインセンティブが入る契約でしたが、そこからはド営業で売りまくり一気に400万円程度の創業資金を作り出すことができました。
その後はメディア関連事業が軌道に乗り、営業力とWEBマーケティングを掛け合わせることで上場できる規模にまで拡大しました。
個人投資家から調達する
これもまたとある上場企業の創業時の話なんですが、そこの社長が当時働いていた会社でニッチなビジネスをやっていて、自分でやれば確実に儲かると確信したんですよね。
同僚と一緒に独立して会社を作ることにしたんですが、2人ともお金が無かったんです。
そこで株で儲けた知人を説得して、最初の運転資金である1000万円を出してもらうことができました。
元々営業力のある社長だったので、会社はどんどん成長していき上場するところまでいきました。
設立時に資金を出してくれた投資家の方はそれなりの株式比率を持っていましたが、少しずつ買い取って比率を下げていってもらったようです。
大株主の一覧にはまだ入っているようですが、その投資家はめちゃくちゃ儲かったんじゃないですかね。
親族や知人からの借入
あまり公になることは少ないと思うんですが、自分の親などからお金を借りて起業する人は結構います。
20代で自己資金で創業してなんて表では言うものの、実際はお金がなくて親から借りて、そこからさらに金融公庫などから創業融資を受けて運転資金を確保してたりするのです。
例えば元ライブドアの堀江社長は当時付き合っていた彼女のお父さんから600万円を借りて、前身となるオン・ザ・エッヂを創業しています。
自分もリーマンショック後の2度目の起業の際は、数万円の資本金だけ積んで会社を設立したはいいものの、当面の運転資金がなかったので奥さんの親から300万円ほど借りました。
この手の話はあまり表立って言う人もいないとは思いますが、身近な人に頭を下げてお願いすることで創業資金を確保するのは良くある話です。
社長が元アフィリエイター
またまた、とある上場企業の創業時の話なんですが、社長が元々は個人アフィリエイターとして稼いでいて、当面のキャッシュエンジンが確保できている状態で法人を設立しました。
大手求人メディア出身の社長と、大手ポータルサイト出身で技術畑の社長の2代表制で事業を始めることになります。
当初はWEBマーケティングやメディア事業などをやりつつ、インターネット関連の様々な支援事業を立ち上げて、途中はASPなどもやっていました。
業種特化の比較サイトが伸びてそのまま上場までいきましたが、組織が拡大するタイミングで創業者の2人は抜けて別の取締役の方に代表を譲っています。
アフィリエイトをやっている人なら、なんとなく成長イメージがつきやすいかもしれませんね。
スモールビジネスがおすすめな理由
大きく資金調達する必要もなく、ビジネスとしても汎用的なスモールビジネスでの起業は、初めて起業する人にとっておすすめの方法です。
明確に作りたいサービスや事業がまだなくても、起業しながら軌道に乗せて資金を捻出していくこともできます。
とはいえ、スモールビジネスだからといって簡単に利益が出せるわけではありません。
最も重要なのは顧客開拓で、社長自らが前線に立って売上を伸ばしていかなければならないため、営業力を身につけたり泥臭い仕事も進んで行う必要があります。
スモールビジネスからの展開
スモールビジネスの良い点は、顧客基盤ができることです。
例えば外食産業など特定の業種に向けてWEB制作を受託する事業をやっていけば、飲食店の顧客基盤を作ることができます。
その中で、顧客が困っていることやニーズを拾い上げて、SaaSを作って展開するのもアリですし、少し派生して採用支援サービスなどもできるかもしれません。
顧客の声をダイレクトに聞ける立ち位置にいれば、そこから急成長する新しいビジネスを作り出すこともできるのです。
新しいサービスを作って0から開拓するのは大変ですが、顧客リストがあればテストマーケもできますし、よりスムーズにビジネスを展開することができますよね。
M&Aという選択肢
スモールビジネスはバリュエーションがつきにくいと言われていますが、しっかりと利益が出せていれば数億円単位で会社を売却することもできます。
新しいビジネスを見つけて注力したい時は、スモールビジネスで立ち上げた会社でそのままやることもできますし、思い切って売却してしまうのも手ですよね。
その際はM&Aクラウドなどのマッチングサイトを利用して、自分の会社を高く買ってくれそうな企業を探していきましょう。
また、これは自分が出資を受けた際に投資家に言われたことですが、もし将来的にIPOを目指さないのであれば、大手企業が欲しくなるような事業戦略をとっていくのも良い方法です。
つまり、先に特定の上場企業を買い手のターゲットにして、そこの企業が簡単にはできないことを事業戦略の中に盛り込んでいくのです。
3年後にその会社に5億で売却するにはどうすれば良いのかと逆算して考えた際に、特定の業種にターゲットを絞ったり、業務が効率化できるシステムを作ったりと、買い手にとってプラスになるような付加価値を作っていきましょう。
実直に事業成長させて拡大する
冒頭でも説明したように、スモールビジネスとはいえそのままIPOできるくらいまで成長する企業もあります。
例えば売上の9割は受託開発でも、SaaSを作ったり別の急成長しそうなプロダクトを作っていれば、それなりの時価総額で上場する会社も多いんですよね。
また、しっかりと利益を出してキャッシュを作っていけば、有望な人材やプロダクトを持っている企業を買収することだってできるのです。
実際に1つの事業で会社を成長させて、同業他社をどんどんM&Aして大きくなっている会社なんかもありますよね。
スモールビジネス起業のまとめ
ここまでスモールビジネスでの起業について、おすすめする理由と事例などを解説してきました。
もちろんVCなどから大きく資金調達をして成功を目指す、スタートアップ型の起業が悪いというわけではありません。
あくまで成功確率を考えた上で、自分に合った起業の仕方を選択するのが良いのではないでしょうか。
例えばtoC向けのサービスをいきなり作るよりは、はるかに難易度が低いのがスモールビジネスでの起業なのです。
スモールビジネスのデメリット
スモールビジネスで起業することのデメリットは、シンプルに成長までの時間がかかることです。
労働集約型だったり、豊富な資金によるレバレッジを効かせることができないため、コツコツと売上や利益を積み重ねていかなければなりません。
汎用的なビジネスであるがゆえに競合他社は沢山ありますし、難易度が低いとはいえ顧客開拓ができなければ簡単に潰れてしまいます。
また、もし20代でスモールビジネスで起業しようとして、1人で会社を立ち上げたとします。
受託をコツコツとやって食えていけるようになり、現状に満足してそのまま10年経ったら潰しの効かないオッサンになってしまうなんてこともあるのです。
目的を持って起業しよう
スモールビジネスをある程度の規模まで成長させて売却することで、まとまった資金を手にするのも1つの選択肢です。
また、その事業をコツコツと成長させて規模を拡大していくもの良いでしょう。
ここで重要なのがその「期間」と「目的」です。
食えてさえいければ良いという目的であれば、BtoBの受託などはサラリーマンとその立ち位置はあまり変わりません。
自由度は増えますが雇用が守られているわけではないので、その対価としてリスクが跳ね上がっている状態でもあるのです。
起業する際にはいつまでにどうなりたいのかを明確にして、仲間を集めて起業するのか、1人でコツコツと小さく始めていくのか考えて進めていくのが良いでしょう。
スモールビジネスでの起業は、目的に対する難易度とリスクの観点が重要なんですよね。
考えるよりもまず行動を
自分が本当にやりたい事業がすでにあるのなら、それを実現するための最短経路を選択するべきですし、そのために最初はスモールビジネスから始めるというのもアリなんじゃないでしょうか。
自分の経験や知り合いの創業時の話を織り交ぜて解説してきましたが、起業したいと思ったら今すぐ動くことが重要です。
どんなビジネスであれリスクが無いことはあり得ないので、まずはやってみることが最初の一歩目になります。
全ては「やるかやらないか」の意思決定でしかないのです。
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